出演: カジミェシュ・オパリンスキ, ズィグムント・マチェイェフスキ, ズィグムント・ジンテル
監督: アンジェイ・ムンク
列車に轢かれて死んだ、ひとりの老いた元鉄道技師。
謎に満ちたその死の真相は?
ムンクの長編第一作にして、推理劇的展開に包まれた
教条的「社会主義リアリズム」への大胆な挑戦状。
イエジー・ステファン・スタヴィンスキの原案に基づくアンジェイ・ムンクの長編第一作。脚本は、スタヴィンスキとムンクが共同で執筆した。
1950年のある晩、老いた元鉄道技師オジェホフスキ(カジミェシュ・オパリンスキ)が列車に轢かれて死ぬ。死体の傍らに聳え立つ信号灯には、「事故の危険あり」を示すランプ二つではなく「進んでよし」を示すランプ一つが灯っていた。しかし信号灯にはランプが一つしか取りつけられておらず、もう一つのランプは外され地面に置かれていた。その後オジェホフスキの死をめぐって、駅事務所で調査委員会による査問がおこなわれる。そして、生前の彼と関わった三人の鉄道員が召喚され、問われるままに過去の出来事を回想する..。
複数の人物による回想を用いてひとつの「事件」を多視点的に再現する構成は、ムンクのアイディアによるもの。
「鉄路の男」は以下の二点においてポーランド映画史上の重要作だとみなされている。まず、社会主義リアリズムの教条にのっとることなく、率直に労働問題を扱った映画を製作することが可能だと証明した点。次に、社会主義リアリズム的な確固たる「客観的報告」という考え方に異議を唱える語り――教条主義者たちを挑発する多元的視点――を採用した点である。そうした意味において、既存の推理劇風回想形式を応用して観客の興味を惹きつけつつ、同形式をポーランド的文脈に移植することで独自の意味合いを付与した『鉄路の男』は、一本の映画としてほかに類を見ない独創性を獲得している。