前作にはテクノロジーの進化による恩恵があったが、その反動だろうか、本作にはバンド・サウンドへの回帰が見てとれる。さらに、もうひとつのテーマがアルバム・タイトルに.。40代を目前にした桑田が、己の青春期を再検証してみるというのも、作品作りにおける今回の試みだった。大好きだった英米の洋楽への接近(そのパスティーシュを含むジャケットのメンバーたちも)は、その過程で顕れたものだろう。「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」にはビートルズ、なかでもジョージを彷彿させるものがあり、「汚れた台所(キッチン)」ならボブ・ディラン。そしてこの2曲は、紛れもないバンド・サウンドだ。ホーン・セクションが炸裂する「マリワナ伯爵」も、メンバーが若き日に憧れたサウンドのひとつだった。「Soul Bomber(21世紀の精神爆破魔)」ならは、ザ・フーなど、ブリティッシュ・ロックの緻密なサウンドへのオマージュともいえる。ただ、ロックに限った内容ではない。今もよく演奏される「Moon Light Lover」は、都会的なR&Bとして完成度が高く、シングル・ヒット曲「愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~」ではラップを取り入れヒップホップに接近している。さらに「太陽は罪な奴」なら、サザン流のモータウン・サウンドが冴えている。なお、ラストの「心を込めて花束を」のオーケストラ・アレンジに、和製ポップスの開拓者の一人である、宮川泰が招かれているのも特筆すべきことだろう。
収録内容
1. 胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ (Mune Ippai no Ai wo Jounetsu wo Anata e; A Heart Full of Love and Passion to You) 3:51
2. ドラマで始まる恋なのに (Drama de Hajimaru Koi na no ni; Even Though Our Love Started Like a Soap Opera) 5:33
3. 愛の言霊 〜Spiritual Message〜 (Ai no Kotodama ~Spiritual Message~; The Power of Words of Love ~Spiritual Message~) 5:40
4. Young Love (青春の終わりに) (Young Love (Haru no Owari ni); At the End of Youth) 4:01
5. Moon Light Lover 4:54
6. 汚れた台所 (Yogoreta Kitchen; Filthy Kitchen) 4:16
7. あなただけを 〜Summer Heartbreak〜 (Anata Dake wo ~Summer Heartbreak~) 5:16
8. 恋の歌を唄いましょう (Koi no Uta wo Utaimashou; Let’s Sing a Love Song) 4:27
9. マリワナ伯爵 (Marijuana Hakushaku; The Marijuana Earl) 4:12
10. 愛無き愛児 〜Before The Storm〜 (Ai Naki Manago ~Before the Storm~; Beloved Heartless Child ~Before the Storm~) 4:48
11. 恋のジャック・ナイフ (Koi no Jack Knife; Jackknife of Love) 4:37
12. Soul Bomber (21世紀の精神爆破魔) (Soul Bomber (21seiki no Seishin Bakushoma); 21st Century Mental Mad Bomber) 4:35
13. 太陽は罪な奴 (Taiyou wa Tsumi na Yatsu; The Sun Has a Lot to Answer For) 4:21
14. 心を込めて花束を (Kokoro wo Komete Hanataba wo; A Bouquet From the Heart) 4:09
Total album length: 64:40