出演: 中村靖日, 霧島れいか, 山中聡, 山下規介, 板谷由夏
監督: 内田けんじ
第58回カンヌ国際映画祭で、フランス作家協会賞など4賞を受賞。本作が劇場映画デビューとなる内田けんじ監督は、ある一晩の物語を、5人の登場人物それぞれの視点で、時間も縦横に行き来しながら描いていく。彼女にふられたサラリーマンが、親友である探偵にレストランに呼び出され、婚約を破棄されたばかりの見知らぬ女性と意気投合。その裏では、ヤクザの組長が絡む、もうひとつの事件が進行していた。
5人の核に位置するサラリーマン、宮田クンの物語が終わりそうになると、別の人物によって同じ夜の物語がリスタートされ、見えなかった部分でシンクロしていく脚本構成は見事というしかない。ヤクザの哀れな現実など苦笑シーンも織り込みながら、すべてが丸く収まる結末では、思わず顔がほころんでしまうはず! 宮田クン役の中村靖日ら、役にハマリきった俳優たちが自然体の演技だが、何より、宮田クンのとぼけた味わいが映画全体に与える、いい意味での”軽さ”が本作の魅力になっている。脚本とキャスティングが良ければ、これだけ面白いものができるという見本のような傑作だ。(斉藤博昭)